理事長あいさつ

 この度、QSTがその前身の放医研からこれまで四半世紀にわたり続けてきました重粒子線加速器HIMACを利用した共同利用研究プロジェクトの研究ネットワークを発展的に展開して、量子ビーム(医学に用いる重粒子線、陽子線を含む)を用いた学術的活動を行う団体、日本量子医科学会を設立することとなりました。

 加速器技術の発展により人類が手にした粒子線等は、その後の研究の発展により、今日ではがん治療のみならず育種や材料改質など我々の生活の多岐に亘ってその成果が取り入れられております。さらにこの分野の研究の発展により近い将来、人類が宇宙空間に本格的に進出する際にも粒子線等の人体影響についての包括的な理解が必要となっています。

 我が国では、日本放射線腫瘍学会、日本医学物理学会、日本保健物理学会、日本放射線化学会、日本応用物理学会、日本放射線影響学会等で、それぞれの分野に沿った学術活動が行われていますが、残念ながら粒子線等に関する科学領域として共通の学会等の学術ネットワークは形成されておりません。そこで、本学術分野の継続性を保証し、さらなる学術的展開と社会実装を求めて、粒子線等を共通言語とし、様々な分野を横断する学術活動の場としての役割を担うべく新たに本学会を設立することとなりました。

この日本量子医科学会は、医学、物理、工学、生物、化学の基礎から臨床、宇宙、産業等の応用に亘る多分野の参画により、粒子線等を用いた学際的・学術的研究を推進し、その実践と啓蒙活動を通して学術的、産業的価値の拡大・創出を図り、国民の健康と福祉に貢献することを目的としています。そして、学会員の活発な活動の展開により、粒子線等に関する研究基盤の連携と発展を推進し、学術的理解の深化と社会還元の拡大を果たしたいと希望しております。

令和3年5月